CCL追加条件考

半可思惟 - CCLに追加条件は付けられますの続き。shidhoさんがお返事のエントリーを書いてくれて、しかも結構な量の文字起こしまでしてくれました。

労をとってくれたことに感謝。どうもありがとうございます。やっぱり音声より文章の方が検証可能性が上がりますね*1

津田さんも知らなかった

さて、私がCCLにあわせるより著作者の意思表示の方が優先でしょうと述べた件につき

下記文字起こしにあるように、著者としてもCCでは細かい規定は出来ないと思っているふしがあるので、じゃあmorePermissionsでどういう風にすればその意志を表示出来るのか、というのはそういうことを知っている人から聞けたらうれしいのだけど。

というお返事がありました。「著者としてもCCでは細かい規定は出来ないと思っているふしがある」という該当箇所は津田さんのこの発言だと思われます*2

ただまあ、結局だからそれはたぶんCCがあまりにもすごくやっぱり著作権とかよく分からない人が、でもコピーは自由だって表明するためにあえてあれわかりやすくしているところがあると思うんですよね。でもやっぱりそれが故に、使う側からしてみると細かく規定できないという問題も抱えていて、例えばさっき小寺さんがおっしゃっていた、発言が変わっちゃうと困るじゃん、そこだけは残しておいてよ、というのが実は僕らの希望としてはあって、それ以外の別にある種の改変に近いようなアレンジは別に僕ら良いわけじゃないですか、そこに対して文句を言うつもりはなくて、要するにあの本で言うとテキストの中身ですよね、本文と注釈の、その文章自体が変わらなければ、ま、どういう見せ方してもいいよと。それはもうどういう見せ方でもいいし、どういうカットアップしてもいいよ、と僕ら思っているんですけど。

じゃ、CCでそういう規定を出来るかというとなかなかできないというのもあって、なかなかその、あの。あとは例えばいろいろあると思うんですよ、インターネットってやっぱあまりにもコントロールしにくいコピーだから。あのCONTENT'S FUTUREという本を普通にコピー機とかでコピーして、研修会とか勉強会とかで資料として配るのはいちいち許諾とかいりませんけど、インターネットはちょっと勘弁ね、ということもCCってできない、という部分もあるので、なんかそこらへんをもうちょっと細かくね、使いやすい、わかりやすさとともにやっぱり実際にそういう使い方としてここまでOKだけどここはちょっとね、というのを規定できない部分があるので、なんかだからこのCONTENT'S FUTUREにCC改変禁止というのを投げかけたところにはすごくいろんな論点が含まれているんじゃないのか、という気がしています。

このあと小寺さんから突っ込みがないので、たぶんお二人とも知らなかったのでしょう。…とか憶測ばっかりも何ですので、津田さんに遠慮がちに聞いてみました。お返事はこちら。

tsuda @inflorescencia morePermissionsの存在自体は知ってたけど、そういう使い方に使えるという想像力は働かなかったなー。でも最初から「テキストの中身をいじらなければレイアウトなどの変更は自由」みたいな条項は定義しておいた方が良かったのかもね。

http://twitter.com/tsuda/statuses/281062932

shidhoさんの予想通り、とりあえず津田さんについては、知らなかったというか気がつかなかったみたいですね。

付加条件を提案してみる

じゃあ、もし仮に『CONTENT'S FUTURE』にmorePermissionsを付けるとしたら、どういうのが良いのでしょうか。私なりに考えてみました。以下がその草案です。

ライセンス
『CONTENT'S FUTURE』はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとでライセンスされています。 条件は「著者クレジット表示」「非営利利用のみ」「改変禁止」です。詳しくは利用許諾条項をどうぞ。
要するに、オリジナルの作者が誰かってことがわかるようになっていて、なおかつお金を取らないなら、勝手にコピーしたりしても良いということにしています。ただし、改変はしないでください。改変不可にしているのは、意図と違う形で勝手に発言を変えられてしまうと困ってしまうからです。


特則
ただし、以下の利用は(上記ライセンス条件では駄目ってことになりますが)OKにしたいと思います。

  • テキストの中身をいじらない、レイアウトやデザインの変更(例:縦書きを横書きに、脚注をポップアップやアンカーにすることなど)
  • Adsenseを貼ること

ご自分の利用方法が大丈夫か不安なら、連絡の上確認してくださっても構いません。


著者からのお願い
また、以下は著者からの要望です。考慮してもらえると嬉しく思います。

  • 本文だけでなく、脚注も共に載せてください
  • テキストとして、コピペ可能な状態で配布してください
  • 「改変禁止」なので、誤植やOCR化に伴うテキスト変換ミス等は、できる限り修正してから公開していただければ幸いです


最後に
以上のことをライセンスしたからといって、フェアユースなどあなたの権利が影響を受けることはまったくありません。引用や私的な使用のための複製などもご自由にしていただけます。
上記以外の利用(例えば営利利用)であっても、個別に許可を出す場合があります。気軽に相談してください。なお、講演の依頼も絶賛受付中です。(連絡先:コンミラ@mail.jp)

とりあえず、津田さん・小寺さんの発言を参考に作成してみました。基本的にCCLでやや制限的なものを選択しておいて、個別許可で緩めるという手法がお勧めでしょうか…。
こういうのを付記したり、あるいはライセンスについてのページを用意してmorePermissionsとしてリンクさせたりすれば、コンミラの悲劇の再来が防止できるかもしれません。行き違いは、著作者と利用者の双方にとって不幸なことですから。事前に回避できるのであれば、それに越したことはありません*3
そもそもCCLは All Rights Reserved(完全な著作権保持) と Public domain(完全な著作権放棄) の間をグラデーションのように埋めていくことを可能にするものですから*4、こうした利用も十分可能なのです。

CCとCCLと

さて、shidhoさんの意見に次のようなくだりがありました。

というか、自分、今回こうやって指摘されるまで、CCライセンスってものは、著者がある程度自分の意志を曲げ意図しない利用にも目をつぶってわかりやすく表示することで、利用者に自由な利用を促すのが目的の一つだと思ってました。そういうもんじゃないのか。

これは複数のレイヤーの話をごっちゃにしているのではないかと思います。前回も書きましたが、団体としてのCCとライセンスとしてのCCLを、そろそろ分けて議論すべき時期に来ているのではないでしょうか。
著作者が意図しない利用に目をつぶるという決断を下すことと、著作者がCCLを選択すること、CCLがわかりやすい表示をしていること、それにCCが自由で円滑な利用を促すのを目的の一つにしていることは、それぞれ違った問題です。
著作者がある程度自分の意志を曲げるに至るまでの逡巡は、shidhoさんの文字起こしを読むこと、あるいはそのソースのポットキャストを聞くことで一例を垣間見ることができます*5。これは小寺さんが言うように、ビジネスモデルの問題です。CCLを採用しなくても起こりうる話ですよね。
そしてCCLを選択することですが、何となく何気なく選んでいる人たちもいます。「お願いですから私の本は買わないで」などはその例でしょう。そこは矜持と広報と規模の経済の問題です。
それから、繰り返しになりますが、CCLを採用することとCCの理念に共感することは分けて考えるべきです。コンミラの悲劇が起こった要因には、このふたつをうまく区別できなかったことがあると思うからです。CCの理念に対する認識や共感度に開きがあるのに「CCLを使ってるってことは普通こうでしょ?」という思いがあったから、こじれてしまった部分があると思うのです。厳しい言い方をすれば、それぞれが勝手に自分の理想とCC(L)を重ね合わせてしまっている。もちろん「より良い情報共有とは何か?」「未来の著作物利用は?」などをそれぞれが考えて、議論するのは素晴らしいことですし、それはCCの理念に資するものでしょう。でも、理念に多様性がある以上、CCとCCLを区別しないまま、ツールであるCCLを語るのは危険です。「どうして分かってくれないんだ」となってしまい、精神衛生上もよろしくないでしょう。
CCLは単なる著作者意思表示ツールとして割り切ってしまった方が良いのではないでしょうか。

*1:私の真に勝手な予想ですが、小寺さんと津田さんもこうした利用は喜んでくれるんじゃないかと思います

*2:素材となった一次ソースはhttp://blog.shoeisha.com/contentsfuture/2007/09/podcastingcc1.htmlを参照

*3:無論、このようなmorePermissionsをおくことはコンミラの全著作者に許可を得ないといけないと思うので、今からは難しいかもしれない

*4:http://www.creativecommons.jp/learn/を参照

*5:morePermissionsの利用を思いつかない状態だったわけですが、発言を変えられたくないからやっぱり改変禁止にしようというやりとりは、一例となるでしょう