ニコニ・コモンズの法的安定性への懸念がほぼ払拭された件について

「ニコニ・コモンズについて」という文書が公開され、ニコニ・コモンズの指針と詳細が明らかになっている。以前のエントリで、私は「ニコニ・コモンズはライセンスではなく利用ルールないしガイドラインである」と指摘した上で、

しかし、ニコニ・コモンズではこれが可能であると言う。おそらくこれは、ニコニ・コモンズはライセンス契約ではなくガイドラインであり、著作者の一方的な宣言によって事後的に変更することが許されているからであろう。それは「柔軟」かもしれないが、利用者にとってみれば当初の利用条件が変更されるというリスクが大きく、法的安定性に欠く。

というリーガル・リスクに関する懸念を表明していた。

その甲斐あってか、それとも全く関係なく予め企図されていたのかはわからないが、私の懸念が払拭される形でルールが定められたようである(強調部分は引用者による)。

ライセンス条件の変更

  • 作品の登録者は、設定したライセンス条件を後で変更することができます。
  • ライセンス条件変更の効果は、原則として変更後の利用(ダウンロードではないことに注意)に対してのみ及びます。
  • ライセンス条件変更の効果は、原則として変更前の利用に対しては及びません。
  • 登録者は、利用条件を変更することによって利用者に不利益を生じさせる場合があることを十分考慮したうえで、条件の変更を行うことが期待されます。
  • 一般的にライセンス範囲を拡大する場合は不利益を生じさせる可能性が少ないと考えられるため、最初はライセンス条件を限定的にしておくことをお勧めします。
http://www.nicovideo.jp/static/niconicommons/rule.html

利用した作品が削除された場合の対応

  • ニコニ・コモンズに登録された作品が権利侵害等の理由で削除された場合、その作品をダウンロードした利用者にその旨の通知が行われます。
  • 権利侵害による削除の場合、削除された登録作品を利用している利用者は、派生作品の公開を中止するなどして、権利侵害をしない措置を取る必要があります。
  • 公序良俗違反による削除の場合、原則として派生作品の削除などを行う必要はありません。
  • 登録者による削除の場合は、許諾が中止されたものとみなします。中止の効果は利用条件の変更と同様に原則として削除以前に公開されたものには及びません。また、権利侵害による自主削除の場合は、派生作品の公開を中止するなどして、権利侵害をしない措置を取る必要があります。
http://www.nicovideo.jp/static/niconicommons/rule.html

この点に関するニコニ・コモンズの対応と配慮に感謝する。上記のことが明示されたおかげで、利用条件が変更されるかもしれないという利用者にとってのリスクが、かなり軽減したと思う。

…でも、この際もっと欲を言わせてもらえば、CCライセンスにおけるリーガル・コードのように、ライセンスの契約書として有効な利用許諾条項をライセンス条件パターンに合わせて用意してもらえると、さらに嬉しい*1

契約書(あるいは法律そのもの)は、煩わしくて面倒なものとして嫌われがちであるが、発生するかもしれないトラブルについて事前に備えておくという意味で非常に有用である。そして、本件について*2そうだったように、契約書を作成することには、両当事者の得るものと与えるもののバランスを考えて妥協点を探り明確化しておくという効果もあるのである。法は心配性な親のようなもので、ときどき煩わしくもなるし悪事を働けば恐い存在だが、基本的に当事者にとって幸いなものではないかと思うのだ。

*1:もっと強欲になってとりあえず言ってみると、CCライセンスやGPLへの互換性、ピアプロのライセンスの乗り入れ機能などを持たせてくれるとすごく嬉しい

*2:私の指摘を見て直してくれたんじゃないかという妄想を前提とすると