せっかくなのでCCライセンスとニコニ・コモンズの互換性について検討してみる

ひとつ前のエントリでCCライセンスやGPLへの互換性などを持たせてくれるとすごく嬉しいなどど言ってみたものの、言っただけだとさすがにわがまますぎるのではないかと反省した。というわけで、実際にどうすればCCライセンスと互換になりうるのか、という点について考察したい。

ライセンスのパターンを比較する

現行のCCライセンス(JP)は氏名表示(BY)がデフォルトで

  • 氏名表示(BY)―改変禁止(ND)―非営利(NC)
  • 氏名表示(BY)―改変禁止(ND)
  • 氏名表示(BY)―非営利(NC)―継承(SA)
  • 氏名表示(BY)―非営利(NC)
  • 氏名表示(BY)―継承 (SA)
  • 氏名表示(BY)

という以上の6種類をサポートしている。対してニコニ・コモンズでは作品改変許可 (Dとする)がデフォルトで

  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト非限定 (S)
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト非限定 (S)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト非限定 (S)

という状況になっている。ここで少し整理してみよう。CCライセンスにおいて改変禁止(ND)になっていないものは改変しても良いし、非営利(NC)を選んでいないものは営利目的で利用しても構わない。ニコニ・コモンズは作品の利用状況の追跡が可能であるから、氏名表示(BY)が満たされるものと仮定する。そうなると、

  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト非限定 (S)
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト非限定 (S) ≒ 氏名表示(BY)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト非限定 (S) ≒ 氏名表示(BY)―非営利(NC)

ということができると思う。つまり2つのライセンス・パターンにおいてライセンス互換ないしデュアルライセンスへの道が開かれていると言える。

CC+で「営利許可・別途許諾必要」に対応できるかも

さらに、知らない人もいるかもしれないが、少し前に公開されたCC+というものがある。これは、morePermissions*1の延長線上にあるもので、営利目的の利用に関して類型化したものだ。今までもmicroformatたるmorePermissionsに「非営利にしているけど、営利で使いたかったら連絡してね」などの記載はできたのだが、2つの欠点が生じていた。第一に、ライセンスによって許される利用が複雑化して、ひと目見ただけではわからなくなってしまうこと。第二に、当該部分には機械可読性がなく、ユーザによる勝手な解釈や創作を許容してしまうことである。
この欠点を類型化により処理しようとしたのがCC+である。当初からmorePermissionsを使って同様のことは出来たが、CC+というツールを別に用意して「可視的に見えるかたちで」more Permissionsを使えるようにしたのである。CC+が無い場合は、見た目だとCCライセンスのマークしかないから別の条項があるとはわからないが、CC+のマークがあれば、別の条項もあることが「見た目」で分かる。一般のCCライセンスとの判別もできる。そしてCC+はCCの3層構造に対応する形でつくられていて、RDFについてもmorePermissionに追記する形で対応している。
でも日本で使えるかはよくわからん。以前CCJPに問い合わせてみたことがあったが、返事が無かった…。CC+やCC0の取組みを紹介する記事もCCJP内には見つからない…。

一応、CC+の利用事例として紹介されているなかに

Restrict commercial use with a CC license with the NonCommercial condition, and then use a separate agreement with some party (could be yourself or third-party) to broker commercial rights (licensing, sales, reproduction, etc).
NC(非営利)であるCCライセンスによって商業用途を制限します。次に、当事者(自分か第三者であるかもしれない)との別個の合意を利用して、商業的権利(認可、販売、展示など)を仲介してください。

とあるので、CC+が日本で使えるなら「営利許可・別途許諾必要 (C+)」というオプションも満たすことが出来る。すると、

  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可・別途許諾必要 (C+)―サイト非限定 (S) ≒ 氏名表示(BY)―非営利(NC)―CC+
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―営利許可 (C)―サイト非限定 (S) ≒ 氏名表示(BY)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト限定 (NS)
  • 改変許可(D)―非営利 (NC)―サイト非限定 (S) ≒ 氏名表示(BY)―非営利(NC)

ということになって、ニコニ・コモンズ対応サイトへの掲載目的に限定しないパターン3つは、CCライセンス対応の可能性があるということになる。

というわけで、互換できる部分は互換していただけるとありがたい。CCライセンスはそれなりに世界的に普及したライセンスであって規模の経済が働くから、ニコニ・コモンズにとっても悪い話じゃないと思う。

また、RDF の語彙を使って morePermissions のような記述を加えることは可能であることは指摘しておきたい。さらに、CCライセンスを定義するRDFを利用して独自ライセンスを記述することもできる*2。CCライセンスの採用した3層構造というのは良いアイデアだと思うので、互換性の話は別にしても、できれば実装してほしいと願う。

*1:CCライセンスにつけられる追記のようなもので、連絡先や追加的な許諾を記載するスキーマ

*2:http://www.baldanders.info/spiegel/log2/000371.shtml および http://www.baldanders.info/spiegel/log2/000374.shtml を参照のこと