Danさんにつられてみます。

404 Blog Not Found:数学的にはデジタル情報に著作権はありえない!?について。mixiid:cedさんやあかみさんと話したことを再録。結論から言えば、このレイヤーは保護対象にならないだけって論になると思います。*1
弾さん自身が詭弁、と言ってるのがヒントで、まずあの証明自体途中で意図的に間違えています。それがどこか、考えてみましょう。


全てのデジタル情報はあの数の並びから抽出されたものであり、且つあの数列に著作権が認められないのなら、その引用物でしかないその他全てのデジタル情報も必然的に著作権はなくなってしまう、というのが小飼さんの論です。*2


で、これは前提条件があってデジタル情報はあくまで「数列の並び」であって、その数列の並びによって表現される情報(Wordの文章とかHTMLファイルとか)はここでは無視されてます。小飼さんはこの「数列の並び」に著作権が無い、と論じているだけです。それは事実かもしれないし、そうではないかもしれない。でも、これは別に問題にはなりません。


というのも、デジタル情報が著作物として価値を持つのはそれが「数列の並び」として認識されるからではなく、その「数列の並び」がアプリケーション側で処理されて人間の目に見えるかたちの「データ」として表出されてきた時点だからです。*3


このレイヤーは保護対象にはなりません。たとえ小飼さんのあの論法が正しいとしても、それが「デジタル著作物に著作権は無い」ということにはなりません。小飼さんは「論理的」な答えを欲しているので、もう少し突っ込んだ議論が必要な気もします。


これは「著作物とは何か」という話になると思います。著作権法第10条9-3のあたりが答えだと思ってるんですが。

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
  一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  二 音楽の著作物
  三 舞踊又は無言劇の著作物
  四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  五 建築の著作物
  六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  七 映画の著作物
  八 写真の著作物
  九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
  一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
  二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
  三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

要するに論理展開はすごい穴だらけなわけなのです。

∴すべてのデジタル情報は、上記の数の引用物である
∴引用物そのものに、著作権はない
∴すべてのデジタル情報の著作権は、上記の数の著作権保持者に帰属する

のところにあかみさんは「偶然の一致であっても独立に製作された場合は双方に独立の著作権が発生する」という観点からおかしいって言っていました。
私は最初ぱっと読んだときに

上記の数の著作権はそもそも存在しないか、したとしても消滅している。
そもそも数そのものに著作権は設定できないはず
設定できたとしても、上記の数は少なくともCantor以前にその存在が指摘されている
∴すべてのデジタル情報の著作権は、消滅しているかそもそも存在しない

というところにひっかかりました。
cedさんのご指摘の通りで、でもそれは「著作物とは何か」についてと同じだと思います。*4


あとコメント欄とか見ると、編集という観点から

仮に多数の「引用」から成立するとして、その組合わせに創作性があれば著作物たりえる。すなわちデジタル情報の繋ぎ方にこそ著作権が発生する(表現が違えば繋ぎ方も違う)。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50562830.html

という意見が説得力をもってるみたいですね。確かに「バベルの図書館」を特許登録とかできたとしても信義則的に駄目そうな気がします。

*1:しっぽのさきっちょさんが既に指摘なさっていることではありますが。

*2:ホーリズムみたいな話ですね。

*3:この用語運用で合っているか自信はありませんが…。

*4:あ、でももしこの数字が、コードや数値とかじゃなく、たとえば詩とかアートとして発表されたらって考えるとどうなるのでしょうか?