そのデザイン、間違ってます:Alertbox

ヤコブ・ニールセンのAlertbox -そのデザイン、間違ってます- (RD Books)

ヤコブ・ニールセンのAlertbox -そのデザイン、間違ってます- (RD Books)

この本のメッセージは首尾一貫「ユーザビリティ(使いやすさ)を向上させるためにユーティリティ(有用性)を第一にデザインしよう」ということに徹しています。*1
1995年から2006年4月という、web上ではなかなか長期にわたる執筆をまとめたものということを考慮すると、著者ヤコブ・ニールセンがいかにブレずに主張をしつづけてきたかに驚かされます。


筆者はインターネットにおけるユーザ体験についてのヤコブの法則すなわち「ユーザは大部分の時間を他のサイトですごしている」から、以下のような主張を繰り返し行っています。曰く、「ウェブデザイン標準を導入せよ(目新しいデザインは混乱のもと)」「テキストは流し読み対応にせよ(たいていのユーザはウェブを熟読してなんかいない。簡潔に!)」「インタラクティブなサービスはユーザ主導で(「やりたいようにやらせてくれよー」)」「最新ヴァージョンで提供するなかれ(こまめなヴァージョンアップなんてしない。エンコード方式に制限しましょう)」などなど。
以上のようなことを考慮しないと、ユーザはサイトから離れてしまい、商機などを逸することになりかねないということです。けばけばしさや目新しさなんて一般的ユーザのことを考えれば唾棄すべき、ということ。


でも具体的には、リンクを可視化するためにテキストに色を付けて下線をひくようにとか、目立つ場所にシンプルなものをとか、特別な場合は除いてリセットボタンはダメとか。なんだか当たり前といえば当たり前なことばかりです。でも、実装するとなると盲点になったりしますから、「復習」を兼ねて読んでみると致命的な欠陥を防げるかもしれません。


さて、私にとって特に興味深かったのは、ウェブデザイン標準に関するところとインターネットエリート体験に関するくだりでした。*2
またユーザビリティに関するユーザテスト指南もあるので、そちらも参考になるでしょう。*3
本書の内容は、日本語版ならhttp://www.usability.gr.jp/alertbox/で。本家英語版ならhttp://www.useit.com/alertbox/で得られます。「ウェブデザインの間違いトップ10」がやはり一番閲覧数が多いようですね。


ライアカ!を作るにあたって、この本にかなり影響を受けました。*4
サイトを運営している方は、一度見てみることをお薦めします。


【追記】
ウェブデザイン標準に関するところについて、エントリを別に書きました。
よろしければ「ユーザ・インターフェイス標準化からパクリは擁護できる」もご覧ください。

*1:詳しくは「ユーザビリティとは?」を参照してください。

*2:カスタマイゼーションとパーソナライゼーションの違いも興味深かった。端的に言えば前者はユーザが直接コントロールするものであり、後者はコンピュータ主導で行われるもの。

*3:カードソーティングとの違いは必読。あと、こどもと大人、高齢者の反応の違いなどもなかなか面白いです。

*4:とはいえ、ニールセンの推奨することを破ってる部分も多々ありますが・・・。