Microsoft is Deadはやっぱり釣り、あるいは、Paul Grahamが見込んだリスクの甘さ

Microsoft is Deadは釣りだったということは、Paul Graham自身が言っています…

When I wrote that Microsoft was dead, I didn't mean it literally. I couldn't have. Companies aren't alive, so they can't die.
In fact "Microsoft is Dead" was what we in the trade call a metaphor. I meant something else.

http://www.paulgraham.com/cliffsnotes.html

マイクロソフトは死んだ」というのは文字通りの意味ではなく、まあメタファーなんですよ、と。

My actual disreputable motive was that I wanted to be the first to call it. But that does at least entail some risk. If you're the first to call something, you'd better be right. If the monster turns out not to be dead after all―if they can somehow morph themselves into something startups have to worry about again―I'll look like a fool. But I'm willing to take that risk.

でも彼の認識しているリスク − マイクロソフトが起死回生の復活を遂げて、「マイクロソフトは死んだ」と先走ったことを口にしたPaul Grahamが笑いものにされてしまうというリスクは、意外と高いのではないかと私は思います。


その鍵を握るのがRay Ozzieです。
Ozzieに関してはMicrosoft is Dead 日本語訳のブクマコメント欄id:cedさんも指摘していましたね*1。Ray Ozzieは現在マイクロソフトのChief Software Architectを務めていて、Bill Gates引退後は氏の後継をも期待される人物です。グループ・ソフトウェアのパイオニアであり、Grooveというサービスの牽引役でもあります。Grooveは、プロジェクト・チームのメンバーといつでもどこででも共同で作業に取り組み、情報を共有できるという…Googleなどをばっちり意識した感じで、なかなか面白い使い心地なコラボレーション・ツール。


で、Ozzieへの評価ですが、これがなんとも灰色な感じです。参考までに少し挙げておきましょう。

私はOzzie に会ったことも話を聞いたこともないので、判断するのは難しいのですが、Gates が Ozzie に相当期待していることは確かです。少なくとも、今、マイクロソフト内部に残っている Executive の誰よりも良い選択だとは思います。
 しかし、ここまで大きくなってしまった Microsoft をこれから引っ張って行くのは誰が引き継いでもものすごく難しいことですね。

http://satoshi.blogs.com/life/2005/11/_microsoft_ray_.html

それにしてもRay Ozzieの仕事は簡単ではない。単にBill Gatesのしていた仕事を引き継ぐだけでなく、失いつつある業界でのリーダーシップを取り戻し、トップエンジニアたちにとって魅力的な企業に変革して行かなければならない。正念場だ。

http://blog.japan.cnet.com/nakajima/archives/002920.html

しかし、問題は第二関門、そのビジョンの遂行者がなぜ今さらRay Ozzieなんだろう。。。?ということだ。web2.0カンファレンスのときのRayの話は、あまりにもつまらなかった。夢とか野望とかいうものを感じられなかった。どうも、彼はweb時代の文法が理解できてない気がする。おそらく、会場にいた若い世代の多くは、同じことを感じたはずだ。広告ビジネスへのシフトを後押ししたのは彼だという話だが、そのディティールの部分では彼にはさほどビビッドな感受性がないのは明らかだ。
マイクロソフトは、こうしてまずビジョンの提出には成功したけれども、その実行という面で、Rayに指揮権を集中させるという形では成功しないと断言できる。

http://blog.japan.cnet.com/kenn/archives/002433.html?tag=nl


ええ、まあそうなりますよね。大きい組織を動かしていくのは相当に難しいでしょう。でもね、

マイクロソフトの最大の弱みは、自分たちがどれだけダメか未だに分かっていないことだ。彼らは今でも、自分たちが社内でソフトウェアを書けると考えている。デスクトップの世界の基準でなら書けるだろう。でも、その世界は数年前に終わってしまったんだ。

http://www.yamdas.org/column/technique/microsoftj.html

Paul Grahamは言うけれど、実際はかなりの危機感を持っていると思うのです。デスクトップの時代が終わってしまったのではないかと焦っています。対策が吉と出てるか凶と出てるかはちょっとおいておくとしても*2
もちろん、Paul Grahamが『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』で述べているように*3、大企業においてハックするモチベーションを保ち、先進的なプロジェクトを進めていくのはとても難しいことでしょう。しかし、マイクロソフトは別に先進的じゃなくても良いのです。それがマイクロソフトお家芸ってものです。ここのところ、そのお家芸も鳴りを潜めていましたが、Novellとの一件は久々の一撃でしたね*4


でも、それって結局、嵩にかかって攻めてる感じ?時代遅れ?
それを「死んでる」と表現するなら、確かにそうかもしれません。でもやっぱり「危険な存在」ではありつづけるのではないかと思います。


まあ、MSと縁もゆかりもなくて、その上技術動向とかに弱い私が書かなくても、誰かしらこの件に関してきっと補って語ってくれるでしょう*5



【追記】
yomoyomoさんは仕事が速い!
マイクロソフトは死んだ:解説をもう翻訳されたみたいです。さすが、氷高小夜好きを公言なさるだけのことはある。

*1:「Ray Ozzieの話をしていないのは意図的なんだろうか・・・」

*2:もたついているのは確か、かな。でもPaul Graham自身も言うように、既にマイクロソフトは「アプリケーションがウェブを主戦場とすることは今では避けられない」と見て取って、動いている

*3:同じ内容はweb上で公開されている。http://www.shiro.dreamhost.com/scheme/trans/road-j.html

*4:それにGoogleだって、最近は買収の話題ばかりが目立っているところです。新しくて面白いサービスをGoogleは最近独自で開発していたでしょうか

*5:あと誰か、vistaの家電的方向の可能性を指摘してください