米国でGoogle Book Search訴訟が和解した件について、というかid:bookscannerさんはもっと評価されてしかるべき!

各種報道によれば、米国Google社と著作者団体Authors Guildおよび米国出版社協会(AAP)との間で争われていたGoogle Book Searchに関する訴訟について、Googleが1億2500万ドルを支払うほか、書籍検索サービス向上を協力することで和解合意に至ったそうです。


Googleの目的は、彼ら/彼女らが公言し続けている通り、「世界中の情報を体系化し、どこからでもアクセス可能なものにすること」であって、「これでまた一歩、野望に近づいた」という状態であることは自明でしょう。
でも、たくさんの本が電子化されて検索ができるようになるというときに、私たちにとって、便利、手軽、燃えない、かさばらない、意外な本に出会える、本が売れる、広告収入ウマー以外のどんなインパクトがあるのだろうか?


そこのところを考察してくれたのが、今は「西」の地に旅立ってしまわれたid:bookscannerさんだった。bookscannerさんは、本を電子化する目的を、保存目的、閲覧目的、「本が本を読む」目的に3分類し、その3番目の目的を中心に懇切丁寧に説明してくれた。


「本が本を読む」という目的の由来はGregory Crane氏の発言にある。

まぁ、まだまだ原始的な段階だろうけど、電子図書館ってのは、本が本を読んでいるんだよね。そんで、人間の脳なんてものとは関係なく、作業を進めているんだよ。

Digital libraries, where books read one another in however a rudimentary fashion, have already begun to separate intelligence and action from the human brain.

http://www.dlib.org/dlib/march06/crane/03crane.html

本が本を読む、というのは端的に言ってしまえば機械による可読化とコンテンツ相互の半自動的な関連付けを意味していると思う。だから、Googleは本をスキャンした画像を無料公開しても痛くも痒くもない。

「こちら側」で「しめしめ無料で本が読めるぞ」なんて考えている私を尻目に、というより、「お金持ってない私にも本にアクセスできるようにしてるんだから、フェアーユースだ!」なんて感じで私をダシに使って、Googleはどんどんスキャンを進める。でも、「あちら側」では、「本が本を読」んでいるんだから、本当のこと言えば、私は要らない。スキャン画像も要らない。だから、多額の費用をかけてスキャンした画像も、いとも簡単に公開しちゃう。画像はいわば、ニボシか鰹節みたいな存在。ダシとった後なら、ただで配っても、痛くも痒くもない。だって、うまみは、すでにGoogleサーバーの中だから。

http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060814/1155584630

bookscannerさんはさらに、本の電子化界(?)における画像派対文字派の対立なんかも解説してくれたりした。これは言われてみればその通りなのだけれど、結構面白い話だと思う。

このような本の電子化に対するスタンスの違いは予算の使い方にも影響を与え、ひいてはスキャンできる本の冊数や質に差異をもたらすことになる。

証人喚問シリーズもおすすめ。Amazonの「1冊1ドル伝説」への検証とスキャンデータの使い方に関するイノベーションの話を面白可笑しくすすめてくれる。

今回の和解についてであれば、「Google揉め事を整理しましょ」シリーズを読むと良いでしょう。著作権の観点から「スキャン本」を、

  1. 著作権が切れてる「パブリックドメイン」本
  2. 出版社か、著作権持ってる人がちゃんと許可した本
  3. ちゃんと許可がとれてない本

と分類した上で、著作権法上の問題があるのは3のみであることを指摘し、オプトイン派とオプトアウト派の言い分をまとめたりしています。

そして、GoogleがFair Useを主張し、出版社側がそれにどう応えていたかをまとめたり、この騒動にYahoo!Microsoftの思惑が交差して…みたいな話が展開されています。


何が言いたいかというと、タイトル通り、bookscannerさんはもっと評価されてしかるべきで、この機会に読んでみると良いよってことです。うん、もう本当にそれだけ…。