CCJPシンポジウムまとめ②

今日から大学で授業がはじまりました。
債権法各論という講座で、嫌でも契約について学ぶので、その際に「ライセンスを契約と言い切って良いのかどうか?」について改めて考えていきたいと思います。


それでは昨晩公開したまとめ①に続いてまとめ②です。


高野明彦教授 「データベースの新しい価値を引き出す情報サービスについて」

高野先生は「連想する情報サービス」をテーマにご自身の研究報告をなさっていました。
・・・実を言うと高野先生の発表がCCとどう関連しているのかがいまいちつかめなかったことが原因で、ちょっと曖昧な記憶しかないのですが・・・。レッシグブログから引用すると

プレゼンテーションのひとつはNIIが構築した優れたデータベースについてのもので、さまざまなデータベース間の関連性を見つけだしデータベースを横断したトラフィックを生むというものだった。

ということだそうで。
もう少しおぼろげな記憶をたぐりよせてみると「情報の洪水を再計量してつなぎあわせる」というものだったような気がします。Webcat Plusというシステムは、ある文書のなかから特徴的で頻出している単語を選び出し、その単語と類似した単語を探して、さらにその類似単語が多く含まれる文書を探す、という手順で人が連想するのと同じような機能を与えようというものだったかもしれません。それでその「連想」するシステムに使うためのライセンスとしてCCに注目しているとかそんなような・・・。*1
さて、レッシグ先生はデータベースとブックサーチにともなう問題について、米国では訴訟によりプロジェクトが中止されているが日本ではどうなのか、というような質問をなさいました。
それに対して高野先生の答えは、日本はまだ文書の内容をスキャンするところまでいっておらず(高野先生が開発したシステムは本の目次のみがサーチの対象)問題になる以前の水準であり、実験すら始まっていないのだというものでした。
高野先生も述べていたように、日本はアメリカと違ったアプローチができるかもしれないという点では期待できるかもしれません。またレッシグ先生が指摘されたように、アメリカでは著作権の問題に対して考え方の違いから論戦が繰り広げられているのに対し、日本は平和的に異なる視座を認めているという点は評価できるのかもしれませんし。
ただ私には、著作権やその周辺に関する理解が浅かったり、あるいは帝国主義的な態度によって完全に現状を無視しているため、論点になるほどの状態になっていないだけな気がします。*2

加藤衛氏 「著作者の選択とJASRACの音楽著作権管理」

加藤氏は①CCと著作権管理団体側②JASRACの現状③JASRACからみたCCという3点をお話してくださいました。*3
まず①について。JASRACの親玉のような団体CISAC(著作権協会国際連合)とCreative Commonsは交渉・接触をもっているとのこと。競合でなく協力関係である認識が双方にあり、発展的関係を築く方向で一致しているそう。素晴らしいですね。
次に②について。JASRACはCCに対応できないらしいです。JASRACでは数年前約款を改正して著作権の信託範囲を選択制にして著作者が選ぶことができるようになったのだそうですが、それまでは著作者が自己利用するときもJASRACにお金を払わなくてはいけないという・・・ちょっとわけのわからない状態だったみたいです。今では分野別(演奏権、録音権、付与権などなど)にはCCを利用できるみたいですが、曲別には選択できないようで。なんだかあまり融通の利かないシステムですね・・・。
さて③ですが、加藤氏としてはCCがポータルサイトを作らなくて良いのか心配なさっているそうです。場合によってはJASRACのシステムや技術を提供することも可能だとも仰っていました。
また著作権保護の対象にならないものでもCCライセンス表示がなされていると指摘し、CCライセンス使用者は理解した上で表示をしているのか、と疑問を呈していらっしゃいました。

そしてレッシグ先生はポータルサイトにおけるJASRACとの協力について質問され、加藤氏はJ−WIDにCCが乗っかるのは無理だけれど、お互い補い合うような関係が望ましいと返答なさいました。

この問答を聞いていて、私はちょっと不安になりました。何か決定的な齟齬があるような気がしたからです。加藤氏の話を聞いてるとCCライセンスを何と言うか・・・単なるメタタグとしてみているような気がしてならないのです。でもCCってそれだけじゃなくて、ある理念に裏打ちされたものだと思うのですが・・・。それとも何か戦略に基づいた発言なのでしょうか?
どちらにしてもこれから先が心配です。
杞憂に終われば良いのですが。



というわけでこの続きはその③へ。
気が向いたら続きます・・・。

*1:ちゃんと知りたい方はこちらの記事をどうぞ

*2:隣の芝生状態なのかもしれませんが

*3:詳しくは「JASRACなどとも友好関係を保ちつつ - CCJP主催シンポジウム開催」をご覧下さい