今月の専門外書講読-イノベーションと自由

The Future of Ideas: The Fate of the Commons in a Connected World

The Future of Ideas: The Fate of the Commons in a Connected World


ようやく読み終わりました。長かったです。1ヶ月以上かけてしまいました。*1
この厚い本を通じて著者のローレンス・レッシグが繰り返し述べているのは、自由(free)の価値です。


私たちが新しいものごとを生み出すというのは、何かしら過去のものの上に新しいものを少し付け足したり、あるいは思いもよらないような形で、過去のもの同士をくっつけたりすることです。だから新しいものごとを生み出すには皆が自由に使えるようなリソース(commons)をきちんと確保しなくてはいけません。


レッシグはインターネットの自由さが各種のイノベーションを生んだということをきれいにそして詳細に描き出した上で次のように言います。

The innovations that I discribed flow from the environment the Net is.The environment is mix of control and freedom.It is sensitive to change in that mix.


The environment balances the free against the controlled.Thus, preserving this environment means preserving this balance.*2

しかしこの「フリーなものとコントロールされたものとのバランス」は急速に崩れつつあります。ネットの自由はそれ本来の性質ではなく、規制によって成り立っていることが様々な事案を通じて示されています。例えばメディアの吸収合併や電波競売の加速、少数私企業による独占、著作権強化と拡大され続ける特許・・・。


レッシグは財産権を否定したりはしませんが、でも知的財産を保護しすぎて囲い込みすぎると新しいことなんてできないと警鐘を鳴らしています。


現実の空間では、コントロールは不完全です。それは意図的なものもそうでないものもあります。そしてその不完全さに価値があるならば、法律で規制してその不完全性を確保しなくてはならないと主張します。


でも、これは非常に困難だと思います。人の振る舞いを規定するものは法以外に市場や規範、アーキテクチャなどがありますが、そのどれもがコントロールの完全性を志向しています。そしてコントロールへの欲望に影響されるかたちで、法も動いているからです。DeCSSに対する裁判であるとかデジタルミレニアム著作権法DMCA)など例を挙げれば枚挙に暇がありません。


もちろん、わかってる人たちもたくさんいます。オープンソースを支持する人たちなんかがその例です。

That code was released subject to a license called General Public License (GPL).It was therefore free for anyone take and use, as long as they didn’t bottle up what they took.*3

オープンソースのソフトウェアだと、誰でも使えるし、どうやって動いているのかがわかります。*4それは、ソフトウェアを自由に改良していくことを望む技術者や改良されたものを利用するユーザのためだけでなくソフトウェア関連産業の企業にとっても有用です。


そうは言っても、コントロールを完璧にしようという勢力の方が声が大きく、権力も握っているというのが現状です。


創作や新しい発想は常に過去の上に築かれるものですが、過去は常にその上(=未来)に創造されるものを支配しようとします。また、サイバースペースでは現実の物理的空間よりもコントロールがしやすく、簡単に規制することができます。だからどんどん息苦しくなっていってしまうのです。

The law, through "property", can be used by the king of yesterday to protect themselves against the king of tomorrow, and we --- especially we lawyers --- should be defending tomorrow against yesterday.


昨日の勝者は自分の利益を守り明日の勝者を退けるために、法律を、「所有権」を通じて使うことができる。私たちは―特に我々法律家は―昨日の勝者に対抗し、明日の勝者を守らなくてはならない。*5

自由な社会は、この過去の力を適切に制限することで未来を可能にするのです。

*1:ちなみにペーパーバック購入したのも読みきったのも初めてです。

*2:pp138-139

*3:p54

*4:企業秘密になるので、ソースの情報をほとんど公開していない場合がほとんどです

*5:p xix