2007-01-01から1年間の記事一覧

「リスペクトを守るために延長」のおかしさ

問題の発言 昨日の24日に、ICPFが三田誠広氏を招いて「著作者は著作権をどのように捉えているか」と題するセミナーを行いました。 私は試験中のため残念ながら参加できませんでしたが、大変興味深い対話がなされたようです。そのなかで私が特に気になったの…

Winny特別調査員2の違法性について考えてみました

ネットエージェント社が発表した「Winny特別調査員2」という製品について、無印吉澤さんとid:atsushienoさんとTwitter上で話したことのまとめです。 Winny特別調査員2は、「調査員CD」を会社が従業員に配布し、従業員が自宅のPCにCD-ROMをセットすることで…

プチ白田先生祭のまとめ

anondに掲載された「平成十九年六月十五日白田秀彰演説記録」がすごい勢いでブクマされています。先日のエントリでフォーラムのメモを公開したものの、白田先生の熱さが伝わらないかもなと思っていたので喜ばしい限りです。 さて、CNETの記事「YouTubeやコミ…

第3回thinkCの私的メモ

著作権保護期間延長問題を考えるフォーラム公開トークイベント vol.3「コミケ、2ちゃんねる、はてなセリフと作家と著作権」を聞きに行ってきました。 「コミケ、2ちゃんねる、はてなセリフと作家と著作権」 2007年6月15日(金) 午後6:30 - 8:30 慶應義塾…

ジェネリック医薬品試験事件

ケース課題(2007-02)X社は、糖尿病用剤として「A錠」なる医薬を製造、販売している。同社は、その主成分であるAという化学物質について特許権を取得した。この特許権(「本件特許権」)は、今年1月15日に存続期間が満了している。 Y社は、今年の1月20日ご…

いちからはじめる特許法―webで読める資料中心の予習

今週のゼミのケース課題は特許法と薬事法関連。特許法は未習なので、皆についていくためにちょっと調べてみました。以下は予習のまとめです。 特許法の目的 特許法の目的は「発明の奨励」です(同法1条)。一定期間独占権を付与することにより特許発明を保護し…

保護の不完全さが「著作権」を守ることもある

「中古店、特に新古書店を正当化する論拠は何だろう?」の続き。当該コメント欄を参照していただければわかりますが、 権利消尽あるいはファーストセールドクトリン的結論を導く正当化根拠としては、これまでのところ、大まかに三つの考え方が提示されていま…

「リアルから地続きの異郷」と「リアルと切断された異世界」

権利消尽とか黙示の許諾の話はまだ考え足りないのでたぶん続きますが、本日は休題。 学生が件名も名前も書かずにメールを送ってくる、という事例から ケータイメールのトランシーバー的エクリチュール?が身体化し、時間・空間を隔てた相手に対する想像力が…

中古店、特に新古書店を正当化する論拠は何だろう?

知的財産である書籍やCDなどの中古品を転売しても良いのは、譲渡権が消尽することが条文により規定されているからです。原作品または複製物が譲渡された時点で、この譲渡権が消尽すると定めています*1。権利者が知的財産権を一度行使することによって、その…

「何が著作物か」への答案(2)

昨日のエントリで設問の3まで答えてみましたが、今日はその続きです。小倉先生からの出題は以下の通りでしたね。 次に掲げるものは著作物ですか?著作物でないとしたら、著作物性のどの要件を欠きますか。1. 尾崎放哉の「せきをしてもひとり」という句2. 「(…

「何が著作物か」への答案

昨日のエントリでは私のゼミの課題について書きましたが、小倉先生のゼミではこんな課題を出していらっしゃるそうです。 次に掲げるものは著作物ですか?著作物でないとしたら、著作物性のどの要件を欠きますか。 1. 尾崎放哉の「せきをしてもひとり」という…

リージョンフリーDVD並行輸入事件

ケース課題(2007-01)日本法人Y1は、「Perfect History of “The Who”」なるタイトルの映画(以下、「本件映画」という。)の複製物を日本国内で販売することに関し、同映画につき著作権を有する英国法人A社からライセンスを得ており、日本法人Y2はY1を経由…

Microsoft is Deadはやっぱり釣り、あるいは、Paul Grahamが見込んだリスクの甘さ

Microsoft is Deadは釣りだったということは、Paul Graham自身が言っています… When I wrote that Microsoft was dead, I didn't mean it literally. I couldn't have. Companies aren't alive, so they can't die. In fact "Microsoft is Dead" was what we…

レジス・ドゥブレとジャン・ジグラーの対談内容に対する私見

外山さんとか東先生が言っていた「内戦」についていろいろ探していたら2003年に書いた文章を発掘。当時は高校生でしたよ……若い。 レジス・ドゥブレは情報による世界統合について「世界は統合化されればされるほど、ますます細分化される」と表現している。こ…

Jimmy Wales氏インタビューの私的メモ

はじめにお断りしておきますが、結構長いです。そしてこのメモはWikipedia:オフラインミーティング/20070318Tokyo中に個人的に書き留めたものとid:cedさんからお借りしたメモを足したものですので*1、Jimmy Walesさんや質問者の方など発言者の意図を正確に反…

「知的財産推進計画2006」のパブコメ募集中です

政府は、現在、知的財産基本法に基づき、「知的財産推進計画2006」の見直しを進めております。 つきましては、「知的財産推進計画2006」の見直しにあたり新たに盛り込むべき政策事項について、国民の皆様から幅広くご意見を募集いたします。ご意見は…

Creative Commons v3 正式公開

CCv3についてスラッシュドット ジャパンにたれこんだら採用されたよ、わーい! Creative Commons v3 正式公開 mhattaによる 2007年02月27日 9時00分の掲載 普及に拍車がかかるかな部門より. 法廷 インターネット Index inf. 曰く、 「Some Rights Reserved…

今週の気になる著作権関連記事

ニコニコ動画にDDoS攻撃、サービス一時停止 - ITmedia News ニコニコ動画、YouTubeからアクセス規制されて閉鎖 - GIGAZINE この件に関して「YouTubeだってただのりじゃないか」という意見がありますが、それは異なるレイヤーの話を混同しています。YouTubeの…

Rimoなんてどうでも良くなってしまいました

本日はてなからリリースされた「Rimo(リィモ)」。テレビのリモコンのような操作画面で、インターネットの人気動画を楽しめる動画サービスだそうで。 Rimoのチャンネルでは、インターネットで人気の動画がエンドレスに再生されます。これまで能動的にパソコン…

P2Pは音楽の売上にそんなにダメージを与えていないよ、という研究

はてブではあまり話題になっていないみたいなのでご紹介。 合法的な音楽売上に対するP2Pの影響に関する調査というのをFelix Oberholzer-GeeさんとKoleman Strumpfさんという方が行ったそうです。結果はthe Journal of Political Economyに掲載されています。…

... And one fine morning ―

展覧会が本当に目前に迫っていて本来なら死ぬ気で絵を描かなくてはいけない状況ではあるけれど、筆が動かないので最近思うことをつらつらと書いてみたいと思う。 グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)作者: スコットフィッツジェラルド,Francis …

意識に直接与えられているものについての試論

時間と自由 (岩波文庫)作者: ベルクソン,Henri Bergson,中村文郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/05/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 74回この商品を含むブログ (43件) を見るアンリ・ベリクソン*1は『意識に直接与えられているものについての試…

「近代」を生きる人間の戯画と、生死の間に咲く花

2005年に書いた文章を掲載。 いまでもこういう図像学っぽい解釈をときどきします。 モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)作者: ミヒャエル・エンデ,Michael Ende,大島かおり出版社/メーカー:…

茶会ブックリスト

そういえば、ロージナ茶会のreferencesを更新しました。id:cedさんが中心となって編纂しています。テーマは「情報化社会を見渡す100冊」。 なるべく全部読んで書評を書きたいと思います…。 【追記】 既に書評を書いている本 半可思惟 - 白田秀彰著『インター…

第1回定例茶会報告

日時:2007年1月28日(日) 15:00〜17:30*1 会場:ロージナ茶房 参加者:10名 論題:欧州IPTV事情、ニコニコ動画、大茶会の打ち合わせ、情報通信省構想など まずは出張帰りのid:kiraさんからヨーロッパで見聞してきたことを紹介(詳細は非公開)。その一部は…

信頼と信用に関するlifehack

信頼と信用というのは違う意味を持っていると捉えているので、私は能力に対する期待としての信用と、意図に対する期待としての信頼を時々わけて使います。 それは説得者の専門性に基づく能力(competence)と、説得者の意図についての信頼性(trustworthines…

ひねくれものの知恵の実

Freakonomics Intl Pb: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything作者: Steven D. Levitt,Stephen J. Dubner出版社/メーカー: William Morrow & Co発売日: 2006/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (7件) を見る Freakonomics…

コテハンの責任とキャラ選択―人格と責任について―

序 個人主義は近代的市民社会の基底を成す思想であるが、実は不明確な観点を含んでいる。それは時間的に継続する普遍の統一的人格の存在を自明のものとして前提にしているという点である。この論考では、このようなリジットな個人観に対してやわらかい人格観…

著作権と所有の関係についての考察

ナカブロさんが追記にて しかしご質問のなかに出ていたロック的な労働価値所有論の観点からすると、著作権法は全然意味不明なんです。 創作者は自ら著作物を生み出したわけですから、「彼の労働とその手の働きは、まさしく彼のものである」という法格言通り…

著作権という言葉について

前々回のエントリに対してナカブロさんからいくつかご指摘をいただきましたので、お礼も兼ねていくつか書かせていただきたいと思います。 第一に、これは誤解ではなくて簡略化して理解しやすく説明しているだけだと思いますけれど、たしかに著作権法は著作者…